Ameya Eitaro(あめやえいたろう)

Ameya ROOTS VOL.04

あめやが大切にしたいこと

[愛媛]ブラットオレンジ

  • VOL.04 愛媛ブラッドオレンジ
  • VOL.04 愛媛ブラッドオレンジ

ブラットオレンジの里、愛媛を訪ねてイタリア生まれ、愛媛育ち。真っ赤な血潮のブラッドオレンジ。

愛媛柑橘の発祥地で家業を継ぐ

今回訪れた愛媛県宇和島市にある吉田町は愛媛柑橘の発祥地とも言われ、江戸時代にみかんの原木が持ち込まれて以来200年、愛媛県内でも歴史がある特別な場所です。
そんな宇和島市吉田町にある500アールの土地で、温州みかん、ポンカン、伊予柑、しらぬい、せとかなど20種以上の柑橘を栽培しているのがYAMAUCHI FARMの山内 直子さん、54歳。現在は3人のお子さんとご両親の三世代家族の中心的な存在。
ブラッドオレンジ同様の真っ赤な作業着とキャップで迎えてくださいました。
キラキラとした明るい笑顔と、いい意味で農家さんっぽくないキャラクターが印象的。
柑橘農家に生まれ学校を出たあと、アパレル店員、フラワーショップ店長、旅行添乗員を経て結婚。将来的に子供中心の生活に変えていきたいという想いから、28歳の時にみかん農家の一人娘である山内さんは三代目として家業の果樹園を継ぎ、まもなく30年を迎えます。

ブラッドオレンジとの出会い

就農してしばらくたったころ、繁忙期と閑散期がある柑橘栽培をもっと効率よく作業する事はできないか、通年を通して平均的な栽培はできないだろうか?そんなことを考え始めた時期があったそうです。おりしも柑橘類の相場は下がり気味。
収穫期の異なる品種を組み合わせる事で、忙しさが分散できる、そう考え山内さんは思い切って他品種への植え替えを決め、取り掛かります。
さらに、県の試験場である「みかん研究所」からブラッドオレンジを栽培してみないか、という募集を知ります。温州みかんが主流だった当時、”赤いみかん”はリスクのある新品種とされ敬遠されていましたが、なんでも受け入れようと持ち前のチャレンジ精神で山内さんは手を挙げプロジェクトに参加。
やると決めたら、その先は早い。先代から引き継いだ木を思い切ってバッサ、バッサと伐採し、ブラッドオレンジに植え替えを始めました。当時は周囲から「大切な木を切ってしまい、あんなものを植えて大丈夫か?」と陰口をたたかれ辛い日々もあったそうです。
そんな日々の積み重ねがあって、吉田町が全国初のブラッドオレンジ産地化を進めた最初一歩だったのです。
「古いやり方に捉われず、どんどん新しいことに挑戦する」「常にお客様に新しい価値をご提供できる」という想いが人一倍強い山内さん。前職の影響もあるのかもしれません。
果実へ注げるだけの愛情を注ぎ、分からないことは専門指導員に遠慮なく訊ねる。専門家の持つ知識・技術を、自ら実践的に検証し活かしていく、そんな新しい風を受け入れる強さは、実生活同様に大家族のお母さんの様にとても頼もしい存在です。
新たな価値を受け入れる山内さんらのチャレンジは、現在の吉田町がブラッドオレンジの里と言われるようになった要因のひとつなのかもしれません。

真っ赤なオレンジ

真っ赤な果肉と果汁からその名がついたブラッドオレンジ。(ブラッド=イタリア語で「血」の意味)
原産地はイタリアのシチリア島。柑橘類で唯一赤い果実をもつオレンジです。
インパクトのあるその赤色の正体は、ブルーベリーなどに多く含まれるポリフェノールの一種「アントシアニン」です。近ごろの研究では、老化の原因となる活性酸素を抑えてくれる効果が期待されるそうです。
現在ブラッドオレンジは2品種が栽培されています。
3~4月に収穫される「モロ種」。果皮・果肉共に赤身が強くすっきりとした酸味と豊かな風味が特徴。主に加工用として収穫されます。
もうひとつは4~5月に収穫される「タロッコ種」。濃いオレンジ色でコクのある甘さと濃厚な香りが特徴です。主に生食用として収穫されます。
本場イタリアのブラッドオレンジと国産のものを比べると酸味は柔らかく甘味が強い、美しい赤色、独特の芳醇な香り、コクのある甘さ、全て備えたブラッドオレンジだといえるかもしれません。(今回取材をさせて頂いたのは、飴の原料にもなっている品種「モロ種」です)

ブラッドオレンジに選ばれた土地

日本のブラッドオレンジの栽培は始まって歴史が浅く栽培方法は確立されておらず、まだ手探りの状態なんだそうです。
同じ気候であるエリアの中でも、育つ土地と育たない土地、甘くなる土地とならない土地、色廻りが良い土地と悪い土地、と収穫後の仕上がりも様々。

宇和海の入り江と半島が複雑に交錯するリアス式海岸に面した恵まれたロケーション。
山内さんのブラッドオレンジの畑は、驚くほど急斜面にあります。
まっすぐ立っていることですら大変です。さらに収穫した作物が入った10kg以上あるコンテナを担いでの作業と過酷な事ばかり。けどそんな環境にもきちんとした理由があります。
ひとつは水はけのよさ。天から降り注いだ雨は適度な水分を残し海に流れ、乾燥した天気のまま収穫を迎えると最高の状態に仕上がります。
もうひとつは3つの太陽を浴びる絶好のロケーション。「空から降り注ぐ太陽」「海から照り返される太陽」「山肌に積まれた石垣から照り返される太陽」太陽の光をたっぷり吸うほどおいしさが増していきます。
そして土づくりも大切な要素。海から吹きこむミネラルたっぷりの潮風が山の土壌を肥やします。山内さんは牛ふんを入れ栄養たっぷりの土壌を作り、たくましく健康に育てます。
家族の健康状態をうかがい知るのと同じように、果実の具合を観察し微妙な変化を読み取りながらの栽培。人が快適に効率よく栽培でき収穫ができる畑もいいけど、より作物が気持ちよく、かつ健康的に育つ環境を優先した結果だと教えてくれました。
ふと一言、「栽培中、毎日ここへ登って眺める海の景色が気持ちいんですよね」そう話す山内さんの笑顔はとても素敵でした。作物が心地よい場所であり、人が心地よい場所なんだろうな。
幾つもの工夫や想いを持った山内さんの畑は「ブラッドオレンジに選ばれた土地」であると言えるかもしれません。

食べる人と生産者の関係を築きたい

お客様とは単なる消費者と生産者という関係ではなく、人と人の温かい関係を築いていきたいと願う山内さん。
ご自宅のそばにゲストハウスを作り、交流の拠点にされています。実際に収穫などを体験してもらい、地元宇和島の農業や農村の魅力を発信、とにかくパワフルなんです。
取材が終わり、山内さんのブラッドオレンジで作られた飴をご試食頂きました。
「えーっ、かわいい!」「これ美味しい!」そんな風に仰っていただきながら少しはしゃいだ姿は、とても嬉しそう。
地元・宇和島の資源を価値として捉えてくれる人がいて、店舗で商品として販売されていく。そうする事で地域の魅力がうまく都会で発信され循環していく、それが山内さんの願いなのだろうと強く感じました。
地域の産物を活用する事で、微力ながら生産者さんの想いの一端を担えたのかなと思うと、こちらも嬉しくなりました。

2020年2月
あめや商品開発室
写真
市山崎貞一 徳島県吉野川市在住

EDO TOKYO KIRARI(江戸東京きらりプロジェクト)

  • 宇和海を望む立地宇和海を望む立地
  • YAMAUCHI FARMの山内 直子さんYAMAUCHI FARMの山内 直子さん
  • ブラットオレンジ畑
  • ブラットオレンジ畑
  • ブラットオレンジ畑
  • 急斜面にあるブラットオレンジの畑急斜面にあるブラットオレンジの畑
  • あめやの板あめ「羽一衣」を食べていただく。あめやの板あめ「羽一衣」を食べていただく。
  • あめや商品開発室とYAMAUCHI FARMの山内 直子さん